大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)68号 判決

原告の登録出願にかかる本件実用新案の要旨は、「長方形の両面ダンボール紙に切目1・2・3・4・5・6を夫々形成して底板7および蓋板8を設け、切目1……6に連絡する折目9・10・11を形成して縦波形の側板12を形成し、側板12に該当する部分に波目13が縦になるように各波形の頂部に糊層14を介して波板に側板12および厚板15を糊着し、側板12の両端を接続して箱形に形成した、ダンボール箱の構造」にあり、その具有する作用効果は、「側板12に、厚紙15を一方の面にのみ糊着した波板の波目13を、糊層14を介して糊着した結果、従来のように波目の両面に厚紙が固着されておらず、資材が節約されるのみならず、箱を形成する際、折目9・10・11に厚紙15が何枚も重合せず容易に、しかも確実に折曲せしめられ、折目9・10・11の個所にしわが生ずるおそれがなく正確に角隅部が形成され、また側板12および側板12の内側に貼着した波板の波目13は箱の縦方向に従つて縦列に貼着されているから、各波形は崩れたり変形したりすることなく支柱のごとき作用をなし、上下からの加圧に対し応力が大で箱を多数積み重ねても破損するおそれがなく耐久力を有する」ことにあることが認められる。

一方前記当事者間に争いのない事実とその成立に争いのない甲第二、三号証によると、審決が引用した、昭和十二年実用新案出願公告第一三、三七六号公報(以下第一引用例という。)は、昭和十二年九月三日公告されたもので、これには「段ボール芯のボール紙製組立箱の内側面に、縦波の段ボール紙をもつて作られ箱側と同高の枠板を挿入してなる箱」が記載されており、同じく審決引用の昭和十二年実用新案出願公告第一〇、一四七号公報(以下第二引用例という。)は、昭和十二年七月十日公告されたもので、これには、「上部に蓋片、下部に底片がそれぞれ折目線を介して接続する箱体の内側に補強芯板を止金によつて合着してなる紙製荷造函」が記載されていることが認められる。

以上認定の事実に基いて、まず本件実用新案と第一引用例記載のものとを対比して検討してみるに、両者は、ともに段ボール製組立箱の構造にかかるものであるが、箱の側面部の構成について、前者は、(イ)両面段ボールをもつて側板12を形成し、(ロ)側板12に該当する部分に波目13が縦になるように各波形の頂部に糊層14を介して波板に側板12および厚板15を糊着したことを構成上の要素とするのに対し、後者は箱の内側に縦波の両面段ボールで作られた、箱側面と同高の枠板を挿入してなるものであることが認められる。そして、前者において波板の波目が縦になるように、その全頂部をそれぞれ側板および厚板に糊着した点は、いわゆる片面段ボール紙を波目が縦になるように側板に糊着したものと同視し得べきであるから、結局、両者は、両面段ボールにより形成される側壁の内側に、縦波目の段ボール紙の内層を有する点において一致し、ただ前者は(イ)側板が縦波形に形成され、(ロ)片面段ボールの波目の全頂部を側板に糊着することにより、内層を形成したのに対し、後者は単に両面段ボール紙で作られた枠板を箱の内側に挿入することにより、内層を形成した点において相違することとなると解される。しかるに上記の第二引用例には箱内に補強芯板を止金によつて固着することにより内層を形成したものが記載されていることは、前記認定のとおりであり、固着手段として糊着の方法を用いることは周知に属するから、本願考案のように片面段ボールを側板に糊着内層を形成する点は、第二引用例から当事者が考案力を用いずしてなし得るところといわなければならない。他方、その成立に争いのない乙第一号証の一、二によれば、本願出願前の国内頒布の刊行物である、成田潔英編「最新紙業提要」には、日本工業規格による外装用段ボール箱の種類として、両面段ボール箱のほか、「複両面段ボール箱」および「両面段ボール二重箱」が示されており、その成立に争いのない乙第四号証の二によると複両面段ボールは、両面段ボールにさらに片面段ボールを貼り合わせた二重の段をもつ段ボールをいうことが知られるから、本願出願前に右のように二重の段をもつ段ボールをもつて作られた複両面段ボール箱および両面段ボール二重箱が公知であることが認められる。そうだとすれば、第一引用例の両面段ボールの枠板にかえて、片面段ボールをもつて箱側面に内層を形成する点は、右公知事実から、当業者が容易になし得るところと解すべきであり、さらに段ボール箱において、上下の圧力に対する堅牢度を増すためには、その側面部を縦波形に形成することが工作上当然の配慮と考えられることおよび本願考案の具有する、原告主張の作用効果は、段ボール箱において箱の側面部を複両面段ボールをもつて形成したことにつきると認められることを考え合わせれば、結局本願考案は、審決における前記二引用例および本願出願前の公知事実から当事者が容易に推考することができるものというほかはない。

原告は、前記二引用例および乙第二、三号証記載の考案について出願公告がされている以上、その技術的内容においてこれらと程度を同じくする本願考案は当然登録されるべきであると主張するけれども、証拠に表われた限りにおいては、右諸事例における具体的事案が本件と同一であることを認めることができないのみならず、出願公告の先例がただちに本件における裁判所の判断を左右するものではないこともちろんであるから、原告の右主張は採用できない。

以上の理由により、審決が本件実用新案をもつて旧実用新案法第一条の考案をなしたものと認められないとして、原告の実用新案の登録出願を拒絶したのは結局相当で、審決には原告主張の違法はない。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!